Odooの会計での「Cash Basis(現金主義会計)」とは、現金の実際の支払・受取時点で収益や費用を認識する方式を指します。
✅ 1. 現金主義(Cash Basis)とは?
通常、会計には以下の2種類の会計基準があります:
| 会計基準 | 特徴 |
|---|---|
| 発生主義(Accrual Basis) | 商品やサービスの提供時点で収益・費用を認識 |
| 現金主義(Cash Basis) | 実際の入金・出金時点で収益・費用を認識 |
Odooでは**現金主義税処理(Cash Basis Taxation)**として、税計上のタイミングを「請求書が支払われた時点」に遅らせることができます。
✅ 2. どんなときに使うのか?
- 小規模事業者でキャッシュフロー重視の会計を行いたい場合
- 法人税・消費税の申告要件に現金主義が認められている場合
- Odooで税金を支払いベースで処理したい場合
ご指摘のとおり、Odooにおいて「課税対象を支払いに基づく(Cash Basis Taxation)」を有効にすると、Odooは支払・入金時に「現金主義移行勘定(Cash Basis Transition Account)」という一時的な会計科目を使って処理を行います。
動画で「VAT Payable」が現金主義移行勘定として選ばれていたのは、誤りまたは簡略化のためです。本来は専用の勘定科目(例:現金主義移行税勘定など)を設定すべきです。
✅ 1. 概要:現金主義移行勘定とは?
- 支払い時に税金を認識するため、Odooは税の未確定状態を一時的に保持します。
- その際に使うのが「現金主義移行勘定(Cash Basis Transition Account)」です。
- この勘定を通して税金を「未払い → 支払済み」に切り替えます。
✅ 2. 設定手順(現金主義税処理の設定)
▼ ① 勘定科目の作成
- 会計 > 設定 > 勘定科目
- 新規作成(または検索)
- 名称:
現金主義移行税勘定 - コード例:
222000 - 勘定タイプ:
Current Liabilities(流動負債)など
- 名称:
- 保存
▼ ② 税金の設定変更
- 会計 > 設定 > 税金
- 編集したい税(例:消費税10%)をクリック
- 「詳細オプション」の項目を次のように変更:
- 課税対象:
支払いに基づく(Based on Payment) - 現金主義移行勘定(Cash Basis Transition Account):→ 上記で作成した勘定科目を選択
- 「現金主義仕訳帳」:
CABA(Cash Basis Journal)などを選択(必要に応じて作成)
- 課税対象:
💡「VAT Payable」などの通常の税金勘定を選ばないように注意してください。現金主義用の一時的な勘定を作成し、それを指定するのが正しい設定です。
✅ 3. 処理イメージ(仕訳の流れ)
▼ 例:消費税10%、現金主義の場合
請求書時(まだ未払)
借方: 売掛金 110,000
貸方: 売上高 100,000
貸方: 現金主義移行税勘定 10,000 ← ここが一時的な税保留
入金時
借方: 現金 110,000
貸方: 売掛金 110,000
借方: 現金主義移行税勘定 10,000
貸方: 税金(消費税) 10,000
✅ 4. 関連する設定(仕訳帳の設定)
必要に応じて以下の仕訳帳(ジャーナル)も用意しておくと管理しやすいです:
- 名称:Cash Basis Journal
- コード:CABA
- タイプ:
仕訳帳(Miscellaneous) - **専用使用:税の現金主義処理`に設定
✅ 補足
- 現金主義の税処理を使う場合は、税務署の指導や会計事務所の同意を得たうえで運用することが望ましいです。
- Freeeなどと連携しても、税のタイミング(請求時 or 支払時)が異なると不整合が起きることがあります。
🔍 税レポートの基本的な役割
- **売上税(Output Tax)と仕入税(Input Tax)**を自動集計
- **税差額(納税額または還付額)**を計算
- **期間単位(月・四半期・年)**でレポート生成
- 仕訳帳(Journal)ごと/税率(Tax)ごと/Fiscal Positionごとの分類が可能
- 現金主義課税(Cash Basis)対応も設定可
✅ 表示・操作方法
- メニュー
会計 > レポート > 税レポート - 期間選択
月次・四半期・年次など任意で設定可能 - 会社の選択
マルチカンパニー対応している場合は、右上で会社を切り替え - 内容表示
- 税ごとのベース金額と税額
- 逆仕入税(Reverse Charge)なども個別表示される
- Fiscal Position による分類も考慮される - 表示形式
- PDF出力
- XLSX形式のエクスポート
- 「ドラフトとしてマーク」「ロック」などの処理も可能
🧾 レポート内容の例(通常の付加価値税)
| 税区分 | ベース金額 | 税額 |
|---|---|---|
| 売上税(10%) | ¥1,000,000 | ¥100,000 |
| 仕入税(10%) | ¥500,000 | ¥50,000 |
| 納付額(差額) | ¥50,000 |
📘 特徴的な機能
1. 🔄 現金主義(Cash Basis)の税処理
- 支払または入金があったタイミングで税額が計上される
- 対応する税が
Based on Paymentの設定である必要がある
2. 🌐 Fiscal Positionごとの税再マッピング
- 輸出・EU圏内取引などで、税なし・逆課税が適用される場合の処理を考慮
3. 🧮 自動仕訳との連携
- 税レポートの裏では、自動で会計仕訳が記録されている
(例:仮払消費税、仮受消費税勘定)
✅ 実務的な使い方の流れ
- 税レポートを開く
- 対象期間を選択
- 内容を確認
- PDFでエクスポート or 税務署等へ提出用に出力
- 帳簿・申告との突合
- 必要ならば仕訳再確認(エラー修正)
💡 Tips
- 現金主義の設定があると、税レポートでも「支払いベース」として分類されるようになります。
- Tax Closing の仕訳帳(たとえば
TRTRN)を利用すると、税期間をロックしつつ、期末調整仕訳を追加できます。
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