D365 FO のデータを PowerApps で取得する方法と、そのメリット・デメリット

Dynamics 365 Finance and Operations (D365 FO) のデータを PowerApps で利用することで、より柔軟で迅速な業務プロセスの構築が可能になります。本記事では、D365 FO のデータを PowerApps で取得するための 4 つの主要な方法と、それぞれのメリット・デメリットを比較しながら解説します。


1. データエンティティを利用した方法

概要

D365 FO のデータエンティティを利用してデータを取得する方法です。Power Automate 経由でエンティティのデータを操作したり、メソッドを呼び出すことができます。コネクタを選択してログインするだけで簡単にセットアップできます。

メリット

  • 簡単な使い方: コネクタの選択とログインのみで使用可能。
  • プロセス管理: Power Automate を通じてメソッドを呼び出し、ワークフローを簡単に構築。

デメリット

  • パフォーマンスの問題: データ読み込みが遅れることがあり、大量データの処理には不向き。
  • アプリの移行の課題: 他の環境にアプリを移動する際、構成やデータ依存性が高く、効率的なアプリ管理が困難。

2.デュアルライト

概要

D365 FO のデータを Dataverse とリアルタイムで同期する「デュアルライト」を利用する方法です。同期されたデータを PowerApps で直接利用できます。

メリット

  • リアルタイムの更新: Dataverse を介して D365 FO のデータがリアルタイムに同期される。
  • 高速処理: Dataverse に保存されたデータを効率的に利用可能。

デメリット

  • データの重複: D365 FO と Dataverse に同じデータが保存されるため、ストレージコストや管理負荷が増加。
  • 設定の複雑さ: デュアルライトで使用するエンティティを適切に設定しなければ、同期エラーが発生しやすい。

3.Dataverseデータフロー

概要

既存のデータソースからデータを加工・統合し、Dataverse にインポートするデータフローを活用します。この方法は、Power BI の Power Query の使用に似ており、直感的な操作が可能です。

メリット

  • 大量データの処理: データフローは大量データの処理に特化しており、効率的に取り込める。
  • 使いやすさ: データ抽出や統合の設定が簡単で、ビジネスユーザーにも親和性が高い。

デメリット

  • 一方向同期: データは D365 FO から Dataverse にのみ同期され、Dataverse から D365 FO への逆同期ができない。
  • データの二重化: 同じデータが D365 FO と Dataverse の両方に存在するため、管理が複雑になる場合がある。

4.仮想エンティティ

概要

仮想エンティティを使用して、D365 FO のデータを Dataverse に保存することなく、PowerApps で直接利用します。データの管理や操作が PowerApps 内で可能です。

メリット

  • データ重複の解消: Dataverse にデータを保存しないため、冗長なデータ管理が不要。
  • 移行の容易さ: 仮想エンティティは他の環境に簡単に移行可能で、ALM(アプリケーション管理プロセス)の負担を軽減。
  • 効率的なセットアップ: デュアルライトほど複雑ではなく、迅速に構築可能。

デメリット

  • セットアップの手間: Azure AD アプリの登録や統合ユーザーの設定が必要で、初期設定にやや時間がかかる。
  • 機能の制限: Power Platform 環境と D365 FO 環境の統合が必要で、利用可能なシナリオが限定的。

仮想エンティティのセットアップ手順

  1. Azure AD にアプリを登録する
    • Azure ポータルにアクセスし、新しいアプリを作成します。
  2. D365 FO に統合ユーザーを追加
    • 作成した Azure AD アプリを統合ユーザーとして D365 FO に登録します。
  3. Finance and Operations Virtual Entity パッケージをインストール
    • Power Platform 環境が D365 FO を認識するために必要なパッケージをインストールします(特定の環境では不要)。
  4. Power Platform と D365 FO を接続
    • 仮想エンティティのデータを PowerApps で利用可能にするために、必要なエンティティを選択して接続します。
  5. 結果の確認
    • 選択したエンティティが PowerApps Maker ポータルに表示され、利用可能になります。

まとめ

D365 FO のデータを PowerApps に統合する方法は複数あります。それぞれの特徴を理解し、プロジェクトの要件に最適な方法を選択することが成功への鍵です。必要に応じて組み合わせて利用することも検討しましょう。


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